地獄脚本の連続~ドラマ「silent」1、2、3話感想~

ドラマ「silent」がしんどすぎる件

 

10/21(金)、まだ仕事を続ける同僚を背に会社をそそくさと後にする。

世間は華の金曜日だというのにどこに遊び歩くわけでもなく寄り道もせず(今日に限ってはタワレコにIVEのCD買いに行った)帰路についたのは他でもないドラマ「silent」をいち早く見たくてたまらないからだ。

ドラマは基本的にリアタイせず、録りためて一気に見る派の私にとって翌日が休みの金曜こそ何も気にせずドラマを見ることのできる最高の日だった。

どれだけ泣いて目がぱんぱんに腫れてアイメイクが死んだってどうせ明日は休日なのだからどうなったっていいんだ。そう思うと涙に歯止めがかからなくなる、私ってこんなに泣けるんだ?ってくらいに際限なく泣いてしまう。

 

もちろん「恋愛」がこの作品の題材になっているので、切なくも胸きゅんのようなシーンもあるんですが、胸きゅんどころではなくしんどいシーンしかないので消化しきれないです。ということでもう一方的にしんどすぎシーンを語らせてください。

 

#1「本気で愛した彼は音のない世界で生きていた」

 

一目見ただけでこんなにもの悲しいタイトルがありますか??

耳の聞こえない方と人間模様を描いたドラマってもう出切ってるだろうし、過去のドラマには今も愛されているほどの傑作があると思います。「愛していると言ってくれ」、「オレンジデイズ」などの傑作から、最近も「ファイトソング」とかいう1話しか最高じゃなかったあのドラマなど…様々あるので目新しさというのは正直もう無いというか、同一の題材で差別化をはかるのは難しいと思うんですよね。

ただこれらのすべてのドラマを見て私たちは「作中の登場人物たちが自分の思いを必死に伝えようとする姿」に心打たれるのだと思います。

ストーリーはさておいても手話や表情をめいいっぱい用いて、気持ちを伝えようともがく姿が、私たちの心を動かす要因の一つなのではないかと思います。

 

1話は何といってもラストシーンじゃないでしょうか、でもこのドラマ今のところ毎話ラストシーンで大号泣にもっていくので語りたいのがことごとくラストばかりです。

高校時代付き合っていた紬と想は偶然駅で再会する。紬は8年ぶりの再会に心躍り、楽しげに声をかけるも想は紬を見るなり逃げ出してしまう。

何度声をかけても想は振り向かない、もうこのシーンだけでだいぶしんどい。だってもうこの先には悲しい現実を突きつけられる展開しか待ってないのもう誰が見ても分かるから。

連絡先教えて、今度話そう。そう言ってもずっと浮かない表情の想を見かねて

「そんなに私と話したくない?」

そうすると想はおもむろに手を動かし始める、それが手話だということは誰でもわかる。でも紬の知っている想が、自分の本気で愛していた人が手話を用いて会話をしていることが頭の中で受け入れられない。あの時の想と結びつかなくて困惑してしまう。

手話をし始める時の想の「どうしようかな…伝わらないんだろうな」という一瞬ためらう表情がなんともせつない。きっとこういう経験が伝えたくても伝わらない経験をたくさんしてきたんだろうなと悲しくなる。

そして手話でどうして別れたのか、どうして他を拒絶していたのかを説明する。本当に苦しそうに説明する。そんなこと自分で説明したくないよね、病気になった自分が一番つらくて苦しいんだろうなと、もうこの時点でだいぶ涙止まらなくなってる。

 

「いつか電話もできなくなるし、一緒に音楽も聴けない」

 

耳が聞こえないということはそういうこと、理屈では分かってるけどだんだん声が聞こえなくなる恐怖が伝わってくる。

想の部屋、ベッドの下に置いてあるCDともぬけの殻になったCDラック、使わなくなったスピーカー、悲しげにCDを抱える想の母。それだけで悲しさを表現できる映像の撮り方がうますぎる。

音楽に携わる仕事がしたいとタワレコではたらいている紬、音の聞こえない世界で生きている想。本当になんていう皮肉なんだろう。

 

「うるさい お前うるさいんだよ」

 

冒頭に戻って雪の降った日の二人、雪の日独特の静かな世界と明るく元気な紬に向かって冗談で言って「青羽うるさい!」が悲しいことにリンクする。

紬が「静かだね」と言ったしんとした音のない世界を、想は生きているのだった。

 

他にも湊斗と先生との居酒屋でのシーンも悲しかった、彼はまだ友達の病気を受け入れられないんだろうな。叶うならばまた想と“声”で会話をしたいんだろうな。

それはきっと想も同じかそれ以上だと思うと悲しくてたまらない。

 

#2「好きになれてよかった・・・そう思いたい」

 

タイトルしんどいパート2です。

2話ももう全部のシーンがしんどいんですけど、今回は想にフォーカスを当ててモノローグもすべて想が語っており、想の病気が発覚してから別れるに至るまでが映されます。

私は親じゃないから気持ちが100%は理解できないけれど、子供に病気が発覚してしかもそれがこの先一生付き合っていくことになるものだと発覚して一人涙するシーンってもう何万回見たかわかんないのに毎回しんどくなってしまう。

 

病気が発覚してからというも紬の電話に出られない想、電話が好きで1話で想の声が好きだったと語った紬のことを考えると頭かきむしっちゃうほどしんどい。

公園に呼んで、「名前を呼んで」とお願いするシーン。紬からすれば苗字にくん付けじゃなくてお互いに名前で呼び合う段階に?なんてもしかしたら胸中は浮かれていたかもしれない。すごくかわいい、大学生だもん、可愛い。

でもそんなんじゃなかった、ぜんっぜん違った。もっと重たくて、想はこの先この声だけを頼りに生きていくのかもしれないと思うと髪の毛をむしり取りたくなるくらいにはしんどかった。「想くん」を聞いた想の満足そうで切なそうな表情なかなか見れない。

愛おしくてたまらない「想くん」がこれから先聞けなくなる未来が必ず待ち構えているという悲しすぎる現実。

音のない想の世界で、まだ紬の声は響いているでしょうか。

 

すんごく細かい演出なんですけど、想と奈々が手話で会話をしているシーンにはまったくBGMが控えめなところとか、生活音すらあまり聞こえないように意図的に演出されています。

二人が普段生活しているのはこのように音のない世界なのかと没入できるようになっていてとても素晴らしいと思いました。

静かだからこそ耳を澄ましてしまう、探せどもそこに音なんてないのに。

 

手話教室でのワンシーン

先生「初めから無いのと元からあるものがなくなるのは違う」とか「はじめから出会わなければよかったって思いませんか?」とかそれに対する紬の返答が明るすぎて焼き殺されそうでした。

「好きになれてよかったって思います、そう思いたいです」

まぶしすぎる…このシーン先生と紬の対比がえぐすぎて怖いくらいですけど、如実に二人の人間性が現れててめちゃくちゃ好きなシーンです。

 

手話教室に通った成果がついに想の前で発揮できるシーンも本当に名シーン。全部文字に起こしたいくらいには名シーン名セリフしかない。

少しつたない手つきで手話をしてちょっとどや顔な紬もとってもかわいいし、手話を覚えてきてくれた紬に対して見せた想の笑顔も、ようやくこのドラマの中で少し緊張がほぐれた和やかなシーンでした…

普段当たり前のように声を通して私たちは会話をしているから薄れているけれど、伝えたいことが伝わった喜びそれを実感できる体験それこそがすばらしいと感じた(小並みすぎる感想)

病気のことを何も言わずに黙っていたのも、別れを告げたのも「悲しませたくなかった、病気のことを知ったらそうやって泣くの分かってたから」と言うどこまでも優しすぎる想…

極めつけは「今は、青羽のこと泣かせない優しい人がいるの?」ですよ信じられますか???いい奴すぎて怒り湧いてきそうなくらい優しい人なんですよ、信じられないくらいに。

「(彼氏が)いるよ、今度会ってよ」という紬に対して「え~」っていうリアクションを想がとるんですけど、実際にえ~の声が聞こえてきそうな演技…君こんな年相応みたいな顔もできるんだね、よかった安心した…っていう本当に目黒蓮さんの演技が光るシーン

そしてここで流れる「subtite」

『凍り付いた心には太陽を そして僕が君にとってそのポジションを』

あ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~むりしんど…

ここまで頑張ってあんまり感情を出しすぎないように書いてたけどもう無理。ここ最近見てたドラマでは主題歌の入りがダントツに良い最高。

ドラマ主題歌の入るタイミングオタクなのでここが本当に重要で。ここ数年だと「MIU404」の主題歌、米津玄師の「感電」の入るタイミングが毎回神がかってたんですけど、それ並みに良いですね…

『凍り付いた心(想)には太陽(紬)を』なんですよ完璧に…何食ったらこんな歌詞を思いつくんだよ本当にありがとう、「subtitle」をこの世に生み出してくれて…

と思ってたら踏切で想と紬が話ているところを湊斗に見られてぶつっと嫌な感じで曲が途切れる…

終わりのはじまり———

 

#3「今はもう、好きじゃない…今好きなのは…」

しょっぱな、もうしょっぱなで心えぐられた

「あんま興味なかったけど青羽が好きっていうから見た映画、人が恋に落ちる瞬間を初めて見てしまったってなんだそれって思ってたけど、そっかこれか。こういう感じか」

いやハチクロ~~~~~~作中でこのセリフを言ったのは真山だけど湊斗のポジションはどう考えても竹本くんじゃん。きっついわこんなの…当て馬力がどんどん上がっていく…

 

今回は湊斗に焦点を当てたお話、毎回ちゃんといろんな視点で見れるのにドラマ全体にまとまりがあって、すごいなと思っています。それぞれの悲しみや葛藤があって、それがどれもやっぱり様々で興味深くて、どの登場人物にも共感できる部分があってだから視聴者の心も揺らいでつらい。うまくできてるなあと思います。

 

こんなさ、仕事でずたぼろに弱ってる時に意味わからんくらい自分を甘やかしてくれる面の良い(重要)男がいたらいくらでも甘えてしまう…

でもこうして愛おしい日々を見るたびに、想はこの時も一人寂しくすごしていたのかもれないなと思うとまた虚しくなってしまうこのドラマの憎い部分です。

 

誰かを思い出したかのように音楽に携わりたいと言った紬、その誰かが誰なのかちゃんとわかっている湊斗が悲しい。

振り返るはずのない想の背中に声をかける湊斗が悲しい。

紬が前を向きすぎているから、私もそれに引っ張られちゃってたんですけど友達の病気をそう簡単に受け入れられないというのもそりゃそうだよねと言う話。

紬はきっと、湊斗から手話教室のチラシをもらわなくても手話教室に行っていたんじゃないかなと思う。

耳が聞こえない想→手話をしている→話せないでも話したい→なら手話を私が覚えればいいんだ!という思考には割とすぐ紬ならたどり着きそうな気がする。

そういう風に無理やりにでも前を向く紬に対して、やはり現実を受け入れられずにいる湊斗。心のどこかで間違いであってほしい、またもう一度あの頃のように戻りたい。そう思うのはごく自然で、私もそうなってしまうかもしれないなと思わせられます。

 

ここでようやく心に余裕が生まれたので想の胸きゅんポイント「仕事終わるの待ってていい?」

はあ~~~~~~~~~~~~~~~~~~嫌です待たせねえ!!!!!!!!!!!!こんな顔で待ってていい?なんていわれたら秒で仕事終わらせる。持ってるごみもそのまま持って帰って、あのいけすかねえバイトに渡して強制的にごみ捨てさせてタイムカード切る、勤務時間1時間ほど残して早退。

 

今はもう好きじゃない、私が好きなのは湊斗

おいおい盛大な前フリか???って煽ってられたのも本当に数秒だけだった。

「湊斗って呼んでるんだね」

もうやめてください煽った私が悪かったですすみませんでした。落差すごいからこんなしんどい気持ちにさせないでお願いだから。

自分の耳が聞こえなくなる前に、心の小部屋にそっと紬の声を閉じ込めてその一声をずっと大事に生きてきたけど、湊斗はもう何回も何回だって湊斗って呼ばれている。

愛する人の声が聞こえることが当たり前じゃないことを、名前を呼んで呼ばれてというリレーの特別さ、尊さを誰より知っているのにもう想の耳に届くことのない行き場をなくした声。考えれば考えるほどに虚しくて平行線をたどっちゃう…考えはまとまらない

これもまためちゃくちゃ細かいことだけど、家族の前でしか声は出さないという想がようやくしゃべるシーン。妹ちゃんに話しかける前に一つ咳払いをして整えるのがなんかかわいらしかったです…久しぶりに声を出すのか、少し緊張気味に声を出しているところが素敵でした…!

 

そして3話の肝となる湊斗と想がしっかり対面で出会うシーン

部屋入る前からもう既に不穏だったもんな…これからまたしんどいシーン来る…って身構えちゃうもん

 

想の後ろで椅子に腰かけて想に呼びかける湊斗、その声は届かず虚しく独り言へと化してしまう。

「なんで言ってくれなかったの?」

これに尽きるんだろうな~湊斗の気持ちは。紬のこととかいろいろ思うことはあるんだろうけど、友達が病気のことを自分に黙っていなくなってしまったっていうその部分が大きく傷になってたんだろうな。ちゃんと伝わってほしい、湊斗の思いもちゃんと想に伝わってほしい。紬と想がかつての思いを通わせあえたように、きっと湊斗にもできるはず。

 

てかこれドラマ見返しながら書いてるんだけど、今号泣して止まってたやばい。

 

そして第3話も主題歌の入り方が最高でした、更新してきた2話の良さを…

 

「凍り付いた心には太陽を」そして「僕が君にとってそのポジションを」そんなだいぶ傲慢な思い込みをこじらせてたんだよ

 

ここまでがかなり湊斗視点っぽく感じますよね。凍り付いた心は言わずもがな想の心、太陽というのはこの場合だと湊斗と想の友情というか高校時代青春を共にした仲間的なイメージ。そしてその太陽には自分もなれるんじゃないか、なにかできることがあったんじゃないかと思う湊斗。だいぶ傲慢な思い込みをこじらせてたんだよ……嗚呼救いようがなさすぎる、誰か助けてくれ。

 

高校時代にも同じように後ろから湊斗が声をかけてその時はそれに“わざと”気づかないふりをして前を歩いている想。そんなことがあったから、またあの頃のように振り向いてくれるんじゃないかって、冗談だよって笑ってくれるんじゃないかって…もう名演すぎて…悲しくてたまらない。誰も悪くないから、この悲しさをぶつけられる相手もいないからただただ悲しい。

 

聴覚障害という題材を取り扱っているからか、劇中の音に対するこだわりの強いドラマ、途中でも話した通り、想と奈々のシーンでは極力音を減らして視聴者は無意識に耳を澄ます。劇半も優しくて穏やかなものが多くてとても耳障りがいい。そして何よりも主題歌が素敵です。Official髭男dismの曲だと「Rowan」っていう曲が一番好きだったんですがそれに匹敵する素敵な曲…本当にありがとう「silent」毎週の楽しみが増えましたね

 

はあたまらねえ…この絶望感がうますぎる……

毎週、もっと残酷に現実を突きつけてほしいし毎話気分を徹底的に底まで落ち込ませてほしい…

あと風間俊介が演じる先生の人殺しがバレるのは第何話ですか?